技術・プロダクト

PXRD装置の自動化から始め、実験プロセス全体へ広げていきます。

前提

粉末X線回折分析(PXRD)とは

材料の性能は結晶構造 ── 原子の配列 ── で決まります。バッテリー材料も半導体用コンデンサ材料も、同じ元素構成でありながら結晶構造の違いで性能が変わります。その結晶構造を調べる手段として不可欠なのが、粉末X線回折分析(PXRD)です。

左に横軸2θ・縦軸countsのXRD回折パターン、右に対応する結晶構造の模式図
測定で得られる回折パターン(左)から、結晶構造(右)を求めます。
層状の結晶構造からバッテリーセル、電気自動車の駆動用電池パックへとつながる模式図
バッテリー材料
立方晶の結晶構造から積層セラミックコンデンサ、回路基板へとつながる模式図
半導体用コンデンサ材料
プロダクト

inou! PXRD — PXRD装置の自動化

PXRDは粉体材料R&Dで最もよく使われる手法の1つでありながら、現在は全工程が熟練者に依存し、再現性と効率がボトルネックになっています。inou! PXRD は、前処理から解析・判断までをモジュール単位で自動化します。

  1. 前処理

    粉砕・混合・洗浄

  2. 試料調製

    秤量・充填・平滑化・試料ストレージ

  3. 計測

    測定条件探索・PXRD装置による測定

  4. 解析・判断

    高度解析ソフト・再計測/終了の自動判定

矢印の箇所はすべてロボット制御。モジュール間の搬送・受け渡しまで自動化しています。

動作の様子

自動実験ループの実演

粉末の充填から、試料ホルダーの搬送、PXRD装置へのセット、測定までを、人の手を介さずに実行しています。

PXRD装置は装置メーカー製で、ロボットによる自動化と統合制御を当プロジェクトで実施しています。動画:大阪大学 小野研究室(YouTube)
強み

私たちの技術的な強み

粉体材料を扱う自動実験を、全体設計から実装まで一貫して手がけられること。全体設計・解析・ソフトウェアに強みを持つ小野研究室の研究と、ハードウェア開発・装置統合の研究が融合して生まれた、4つの技術です(特許出願中)。

01. 粉砕の前処理 — 粒子径のオンライン推定

PXRD計測では十分に細かく揃った粉末が必要ですが、粉砕は「どこまで挽くか」の判断が難しく、熟練度の差がそのまま結果に出ます。粉砕中の振動から粒子径をリアルタイムに推定し、目標粒子径で自動停止します。

ロボット粉砕と手動粉砕の粒度分布を並べたグラフ
NaCl を n=3 で粉砕したときの粒度分布の再現性。サンプル間のばらつきに差が出ます。
粉砕後の粒度分布の再現性(NaCl, n=3)
指標 ロボット 手動
繰り返し分布計測の相対標準偏差(D50, n=3) 3.4 % 3.0 %
サンプル間の相対標準偏差(D50, n=3) 2.7 % 9.3 %

02. 試料調製 — ホルダーへの粉末充填

粉末をホルダーへ充填し、測定機器へセットするまでをロボットが実施します。手作業より少量の試料から高精度に測定できるため、合成できる量が限られる新規材料の評価にも向きます。

ロボットと手作業の比較(アナターゼ標準試料)
指標 ロボット 手作業
必要な試料量 80 mg 300 mg
アナターゼ重量分率の相対標準偏差 0.7 % 0.4 %

出典:Yotsumoto et al., Digital Discovery 2024(下記文献2)。

  • 03. ソフトウェア連携による自動計測

    装置メーカーの測定ソフトウェアは多くがGUI操作を前提とし、外部から制御するAPIがありません。キーボード・マウス操作そのものを自動化することで、メーカー製ソフトをそのまま活用します。

  • 04. 専門家レベルの自動解析

    測定結果をデータベースと照合し、リートベルト解析を実行。参照データはユーザー側で追加できます。再計測するか終了するかの判断まで機械側で完結します。

研究業績

論文

  1. Y. Nakajima et al., “Robotic Powder Grinding with Audio-Visual Feedback for Laboratory Automation in Materials Science,” 2023 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS), Detroit, MI, USA, 2023, pp. 8283–8290.
  2. Y. Yotsumoto et al., “Autonomous robotic experimentation system for powder X-ray diffraction,” Digital Discovery, 2024; 3(12): 2523–2532.

大阪大学大学院工学研究科 物理学系専攻 応用物理学コース 先端物性工学領域(小野研究室)

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